火傷病 中国から日本に!?梨やりんごの病気 徹底予防必須!感染したら最後 防除不能 火傷病まとめ

火傷病(かしょうびょう・fireblight)は、梨やりんご、ラフランス等の西洋梨等に感染すると、最悪大規模にわたる樹木の枯死を招きます。その現在防除不能である”火傷病”が中国で発生。それを受け、日本は中国産の果実や花粉等を輸入停止に。火傷病ってどんな病気?症状は?防除法は?日本の梨やりんごはこれから大丈夫?中国産花粉は何故必要なの?

ーこの記事に分かりやすくまとめました。

三常農園のキャラクターいのしし

火傷病は有効な防除法がないと来たもんだ!!オラんとこでも梨もりんごも育ててんだ、販売はしてねけども。立派な実を実らすには長い年月と大変な労力が付き物。どうにかして皆で守んねーといけねーべー!!!!

もくじ

  1. 火傷病とは?
  2. 火傷病に感染したらどうする?予防法&防除法は?
  3. 【火傷病】日本は大丈夫?
  4. 中国産輸入花粉がないと困る現状
  5. 【火傷病】中国ではいつから火傷病が発生していた?
  6. まとめ

火傷病とは?

火傷病菌(エルビニア・アミロボーラという細菌)がリンゴやナシなどのバラ科ナシ亜科植物に感染することによって発症する病気で、最悪樹木を枯死させてしまうほど大きな被害を及ぼします。

枝や幹の中で冬を越し(休眠状態)、春になると活動を始めます。
花や樹木の傷口は特に、菌に侵入されやすい様です。

一度感染すると、どんどん幹に向かって広がり数ヶ月のうちにその樹木全体が枯れることも。

発病すると細菌泥(細菌+細胞外多糖で、樹液のようなもの)が溢れ出るのですが、それも感染を更に広げる要因の一つとなります。

火傷病菌の含まれた細菌泥が、それに誘引されたハエや訪花昆虫であるハチをはじめとした昆虫、そして雨風を媒介して他の花や葉、果実、やがて他の樹木にまで増殖。

最悪果樹園全体にまで被害を及ぼす可能性は決して少なくありません

火傷病の症状

火傷病に感染すると、花や果実は腐り、葉や枝は枯れてしまいます。

その様子にはそれぞれ特徴が見られるため、もっとも情報量の多い写真をご覧いただくことをおすすめいたします。

火傷病菌に関する資料(農林水産省作成)

火傷病に感染したらどうする?

2023年10月現在で、有効な防除法はありません。疑わしい症状が確認された場合は、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所に連絡する必要があります

調査の結果、感染が確認された場合は伐採が義務付けられています。

【火傷病】日本は大丈夫?予防&防除法は?

火傷病の防除法

火傷病は、欧州地中海地域植物防疫機関(EPPO)によると、中国以外でも北アメリカやヨーロッパ、韓国など世界約57か国で発生し、大きな被害をもたらしている様です。

北米では、罹病枝の除去又は罹病樹の伐採及び開花期前の抗生物質剤による予防的散布
などが行われている。加えて、効果的な防除のために環境データに基づく警告システム(例:the
MARYBLYT forecasting system)が開発されている(Thomson et al., 1982; Billing, 1984 van
der Zwet, et al., 1990)。しかし、殺菌剤(抗生物質)の散布は耐性菌の出現等の問題が提起さ
れるところとなっている(van der Zwet and Keil, 1979; van der Zwet and Beer, 1992)。

Erwinia amylovora(火傷病菌)に関する病害虫リスクアナリシス報告書

アメリカやヨーロッパでも、火傷病防除を目的とした研究の元、様々な対策が施されていますが、未だにこれといった有効な防除法はありません。

三常農園のキャラクターいのしし

農薬が効いているうちはいいべが、耐性ができちった火傷病菌についてはお手上げだ。

日本政府は、この火傷病が中国で発生したことを受け、日本での感染元となり得るリンゴやナシなどの果実やその花粉、枝などの中国からの輸入を停止しました(2023年8月30日)。そして、農家さんやJA等にそれらの在庫があった場合は、国が買い取り・廃棄するとのこと。

有効な防除手段がない現在、「感染したら最後」。

徹底的に感染源を断ち、定着させないことが最も有効な予防法であり、また、現時点ではそれしかできないというのが実情なのではないでしょうか。

しかし、この輸入停止により、生産者の一部(といっても、非常に多くの生産者さんがいらっしゃいます)が大変な苦労を強いられることとなります。

三常農園のキャラクターいのしし

「日本には美味しい果物沢山あっから輸入しなくても大丈夫だっぺ!」って思うかしんねーけど、その果物をつくる過程で輸入物に頼っている部分もあんだ実は。

中国輸入産花粉がないと困る現状

上記の通り、中国産花粉は日本の梨の30%、りんごの3%で人工受粉作業に使用されていると推計されています。しかし、リスク分散として中国花粉を一部取り入れている農園も多く存在することから、実際には推計以上の生産者が影響を受けるかもしれないとのこと。

日本全国にて、2024年産の生産に向け、必要に応じて花粉の保管、増産、自家採取を呼びかけられていますが、花粉も花が咲かない分には取れません。

雄木(受粉木)を花が沢山咲くような大木に育てるには何年もかかります…。

現在全国各地の生産地から、授粉樹の苗木や花粉採取に使う機械への注文が殺到し、売り切れが続出している状況です。

【火傷病】中国ではいつから火傷病が発生していた?

日本が輸入停止に踏み切ったのは2023年8月30日。

では、中国ではいつから発生していたのか、気になるところですよね。

火傷病は中国でいつから発生?

  • 2021年以降に発生(中国政府の文書より)
  • 2016年には発生していた(中国の学術論文)

幸い、今のところ日本での発生報告はありませんが、2016年から7年間も感染の機会があったということ。恐ろしいとしか言いようがありません。

「何故報告しなかったのか?」中国を責めたくなりますが、火傷病含め病害虫発生の報告/発表義務はないのだそうです…。

中国の研究機関が国際科学雑誌に発表した論文。17年には新疆ウイグル自治区コルラ市で梨の収量が30~50%減り、100万本以上の梨が枯死したなどとの記述もある。

中国産花粉の輸入停止 日本に長期侵入リスク 火傷病、16年に情報 / 日本農業新聞 (agrinews.co.jp)

こんな深刻な被害が中国で発生していた時も、中国産花粉等は輸入されていたことになります。

三常農園のキャラクターいのしし

いつどこで発生していてもおかしくない状況かもしんねーね・・・

まとめ

現在有効な防除法のない火傷病。

今後も有効な防除法のないまま日本のどこかで発症してしまった場合、梨やりんご、西洋なし農家の方々に大きな損害が発生する可能性があります。

そして、消費者にとっては、入手困難化や価格高騰につながる大問題。

火傷病菌の蔓延を防ぐためにも、皆さんに火傷病についてより深く知っていただきたいという想いで、今回記事にまとめさせていただきました。

この記事が、生産者はより細心の注意を払い、消費者は今後の動向に注視するひとつのきっかけになりましたら嬉しいです。

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